かん吉との日々

イヌとの生活を通して考えたことなど

傘がこわい

今日は朝から雨。
 
かん吉は雨が嫌いだ。雨が降っていると,家の中でもわかるようで,ケージの中から出てこようとしない。リードをつないで無理やり外に連れて行っても,すぐに戻ろうとする。レインコートを着せてもダメ。
 
特に,傘に対して強い恐怖を示すようだ。それがわかってからは傘はささないようにしているのだが,それでもダメ。雨と傘がむすびついてしまっているのかもしれない。
 
傘をさすときに「バサッ」とするのが特に怖いらしい。怯えた様子を見せて逃げようとする。「以前の飼い主に傘でひどいことをされたのだろう」とか家族は言っていたりもしたが,私はそうではないのではないかと思っていた。
 
人、イヌと暮らす』では,眞理子先生が愛犬のキクマルを飼い始めたころに,自分が「ご主人」であることを示すために傘を使ったエピソードが語られている。夫の寿一先生しか「ご主人」とみなしてないキクマルに対して何とかしたいと思った眞理子先生。傘をとってきて,キクマルの前でさっと開いたという。『ソロモンの指環』にあった,菜園を荒らすハイイロガンに対し,ローレンツの奥さんが傘を広げては閉じるということをしたらハイイロガンたちは逃げた,という話を思い出したとのこと。
 
最初はびっくりし,怪訝そうな顔をしていたキクマルだったが,傘の開閉を繰り返すと,だんだん怖くなったようで,尻込みしながら退却し,座り込んでしまったという。決して傘自体で危害が加えられたわけではない。かん吉もはじめはそんな感じだったのではないだろうか。(その後キクマルは問題なく良い子に育ったということだが,眞理子先生のねらい通りにはならず。こういうことが勧められているわけではないので注意してください。)
 
大きな黒い物体が「バサバサ」するという状況は,野生ではタカなどの猛禽類の到来を知らせる。イヌやその祖先のオオカミまではタカに捕食されていなかったかもしれないが ,ネズミなどの小型の哺乳類が捕食されていたのは間違いない。
 
地上を移動する哺乳類には,そういう大きくてバサバサする刺激を怖がるように遺伝的にプログラムされており,それが根強く残っているのかもしれない。ヒトやサルも生得的にヘビのような形を怖がるように。