かん吉との日々

イヌとの生活を通して考えたことなど

「忠誠を誓う」感受期?

ふと,読みかけのまま本棚に並んでいたローレンツの『ソロモンの指環』を手にしてみた。

 
まだ読んでいなかった第10章にイヌに関する記述があった。
 
ローレンツはジャッカル系とオオカミ系に分けてイヌの特徴を論じている。『人、イヌと暮らす』(p.62) によるとイヌの祖先には複数の種があったという説は今では否定されていて,すべてのイヌの祖先はタイリクオオカミ一種であるとされているとのこと。ジャッカル系とオオカミ系に分けることはもはやあまり意味がないかもしれない。しかしそうだとしても,ローレンツの考察は参考になるかもしれない。
 
ローレンツによると,イヌがたった一人の主人に「忠誠を誓う」ようになるには「感受期」があり,それは「ジャッカル系のイヌ」では生後約8カ月から1年半の間に,「オオカミ系のイヌ」ではほぼ6か月目にあるそうだ (p.222)
 
そうだとすると,ジャッカル系かオオカミ系かはよくわからないが,推定年齢7歳で我が家に来たかん吉がそのような忠誠心を持つのは無理なのかもしれない。
 
イヌについての感受期がどの程度認められているかはわからない。その後の研究も調べてみたいところ。「刷り込み」で有名なローレンツなので,感受期を仮定したことには何らかのバイアスも働いていたかもしれない。
 
また,ローレンツによるとイヌが飼い主に示す愛情の起源には,二種類あるという。
 
一つは野生のイヌがその群れのリーダーに対していだく愛着。これはオオカミも有する特徴か。オオカミはヒトには愛着は抱かないが,同種であるグループのリーダーには抱く。それをヒトというまったくの別種の生き物に対して抱くようになったのがイヌ特有の特徴か。
 
二つ目は,本来なら子どもが母親に対して甘えるような愛着。野生型なら幼若期のみにごく短期間しか見られない体の構造や行動が,家畜化された家犬では一生涯保たれていることがあるようだ。ヒトの飼い主にはいつまでも子供っぽいイヌの方が好まれ,選択されたと考えることもできるかもしれない。
 
かん吉はそういう子供っぽさもない。これも保護犬ゆえの経験によるものなのか。あるいは生得的な『個性』なのか。真相はわからない。